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実は勘違い!?自筆証書遺言の作成が公正証書遺言よりも大変な理由3選

2022.08.20

皆様ご存知の遺言書には大きく2つの種類があります。

・自筆証書遺言:自らが書面に文字を綴り作成する遺言書
・公正証書遺言:公証人に作成してもらう遺言書

ではこの2つの遺言書のうち、簡単に作成できる遺言書はどちらだと思われますか?おそらく多くの方が「自筆証書遺言」とお答えになると思います。
弊社主催の「相続対策セミナー」でも、公正証書遺言は公証人との打ち合わせや書類の提出があるため、少々手間がかかる遺言書であり、自筆証書遺言書は、作成する場所、時間を問わず、紙とペンと印鑑があれば作ることができるため容易に作成できると解説しています。

ただし、「公正証書遺言と同じクオリティで作成する」のであれば話は変わります。
実は自筆証書遺言の作成に手間と時間がかかる、その理由を3点解説します。

理由その1:想像以上にたくさんの文字を書かなければいけない

自筆証書遺言を公正証書遺言並みのクオリティに仕上げようとすると、遺言書に書く文字数は飛躍的に多くなります。

例えば次のような内容を記載する必要があります。

不動産(土地、建物など)

所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積、建物の名称、敷地権の割合など

預貯金の口座情報(銀行、信金、農協等)

金融機関名、支店名、口座種類、口座番号など

有価証券の情報(証券会社、株や投資信託等)

金融機関名、銘柄、ファンド名、など

これらの情報は、配偶者であっても遺言者のすべての資産の情報を把握できていないことが多いため、できるだけ細かく記載していたほうが望ましいです。特に最近はネット銀行、ネット証券など、通帳や郵送物などが無い金融機関も多くなってきています。
資産の情報をくまなく記載することで、手続き漏れ、抜けを防止することができます。

平成31年1月より遺言書のルールが変わり、手書きでない財産目録も添付できるようになったため、以前より作成する手間と時間はかかりにくくなりました。
ですが下記の①から③に記載するべき内容がある場合には、以前と同様に手間と時間がかかります。

①予備的遺言

例えば、遺言者(夫)が妻に財産を相続させる内容を記載し、万が一、妻が遺言者(夫)よりも先に死亡した場合、妻に相続させようとした財産を誰に相続させるかを決めておきます。これを「予備的遺言」といいます。

②遺言執行者

遺言執行者は、遺言者がお亡くなりになった後、遺言書通りの相続を実現するための実行役のことです。遺言執行者を誰にするのか、どのような権限を与えるのか、などを記載します。

③付言事項

付言事項とは、遺言者から家族への気持ちや財産の分け方を決めた理由などを記載する最後のメッセージ欄です。遺言者の思いを込めることができるため、文字数が多くなることもありますし、間違えられないプレッシャーもあります。伝えたいことを理解してもらうため、付言事項を書くときは内容が曖昧にならないように注意しましょう。

理由その2:文章を間違えないための準備や、間違えた時の訂正が面倒

自筆証書遺言の内容を間違えないように、予め下書きをされる方が多いのですが、その下書きの作成に時間がかかります。また下書きを作成した後は、間違えないように模写していきますが、もし文字を間違ってしまった場合は下記の方法で訂正する必要があります。

1.訂正したい場所に、元の文字を消さないように二重線を引く

2.正しい文言を記載する

3.二重線の近くに遺言書に捺印する印鑑と同一のもので訂正印を押印する

4.余白に訂正箇所を示して、削除・挿入した文字数など訂正内容を付記し「○行目、○字削除、○字挿入」、署名をする

想像以上に手間と時間がかかるものです。

理由その3:内容の検証手段に乏しい

自筆証書遺言で一番のネックと言っていいのがこれです。遺言書は書き方ひとつで効力を失ってしまうことがあるため記載内容は検証するべきですが、その手段が乏しいのです。本来は相続に詳しい専門家によるチェックを行ったほうが良いのですが、遺言者自身で内容を検証しようとすると、遺言書サンプルの確認や書籍の購読などをする必要があるでしょう。そしていくらチェックをしても「ひょっとしたら間違っているかも…」という不安を拭うことは難しいものです。

遺言書を作成する場合は、自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうが、かかる時間と手間、証拠能力などの機能を加味すると、実はコスパが良い遺言書です。

公正証書遺言作成の大まかな流れは、以下の通りです。
(1)公証人に書類を渡す(来店の他、郵送やメール対応可能な場合も多いです)
(2)遺言書の内容を伝える
(3)文案を作成してもらう

この過程の中で、遺言者に文章作成の手間は全くかかっていません。
公正証書遺言では公証人というライターさんが遺言者である皆様の代わりに文章を作成してくれます。

ただし注意点が1つ。公証人は遺言書の文案を作成するのが仕事であり、その内容の是非、遺言書が相続人に与える影響、相続税額、二次相続の考慮、遺言書以外の解決策などの提案は行ってくれないケースがほとんどです。
様々な観点から遺言内容を検討する必要がある場合は、相続に精通した各種専門家の支援を受けながら作成していくことをお勧めします。
弊社では、各分野の専門家と連携してお客様の公正証書遺言作成のご支援を行っております。まずは、お気軽にご相談ください。

筆者紹介

植野 直孝
福岡相続サポートセンター
上級相続支援コンサルタント

熊本県出身。
2006年に(株)三好不動産に入社。営業・店舗の責任者を経て2014年より相続コーディネート事業に従事。税理士・弁護士・司法書士などの専門家と連携し、お客様の問題解決に向けて日々奔走する。相続相談の他、生命保険・損害保険・投資信託等の金融商品や不動産経営などFPコンサルタントとしても幅広く活躍。年間の相談件数は約300件。
不動産の現場で相続が”争族”になっていくのを目の当たりにした経験から、生前対策の重要性について説く。

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